派遣スタッフを自社に受け入れる際に、派遣先企業がすべき義務がいくつかあります。
派遣スタッフの雇用元はあくまで派遣会社ですが、だからといって派遣先企業が何もしなくていいわけではありません。
もしも義務を適切に行っていない場合、法令に違反したとして指導・助言だけでなく勧告や企業名の公表をされてしまう可能性すらあります。

この記事では、派遣スタッフ受け入れの際に派遣先企業がするべき義務を、契約締結時・受け入れ前・受け入れ中・受け入れ後とそれぞれのフェーズを分けてわかりやすく解説しています。

しっかりポイントを押さえて適切な運用に努めましょう。

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1. 派遣先の義務|契約締結前

2020年4月1日に施行された改正労働者派遣法で、派遣労働者の不合理な待遇差の解消が求められました。
それにより、派遣先はどのような義務を負うのでしょうか。新設された義務と従来のものと併せて時系列ごとに説明していきます。

まずは、労働者派遣契約の締結前についてです。

1:1. 派遣の抵触日通知

派遣スタッフを受け入れる場合、企業は派遣会社に対して事業所単位での派遣受け入れ可能期間を通知する義務があります。これを派遣の抵触日通知といいます。
なお、同一の事業所における派遣受け入れ可能期間は、原則上限3年となっています。

同一派遣スタッフ、同一派遣会社でなくとも派遣という雇用形態の受け入れをしている場合は、それらの期間が合算されます。

Check!派遣の抵触日についての詳しい記事はこちらもご覧ください。
>>「人材派遣の抵触日とは|基礎・事例・注意点・Q&Aをご紹介」

1:2. 派遣料金への配慮

平成30年6月29日成立した「働き方改革関連法」で改正された労働者派遣法によると、同一企業の正規雇用社員と非正規雇用社員の間で不合理な待遇差をなくし、同一労働同一賃金を遵守するようにとの整備がされました。

これは、契約形態の違いによる処遇の格差に左右されることなく、労働者が多様で柔軟な働き方を選択できるようにとの考えのもとで、派遣料金にも配慮が必要となります。

2. 派遣先の義務|派遣スタッフ受け入れ前

契約締結後、派遣スタッフの受け入れが決まって業務を開始してもらう前にすべき義務についてです。

2:1. 派遣先責任者の選任

派遣スタッフを受け入れる企業は、派遣先責任者の選任をする必要があります。
派遣スタッフ100名以下の場合1名です。

基本的には、通常業務と兼任かつ派遣先責任者の職務内容を適切に行える人であれば任命できます。ただし、監査役のポジションにいる方はなれません。

例外として、派遣スタッフと直接雇用の労働者が合計5名以下の場合、選任の必要はありません。

派遣先責任者の職務
ⅰ) 適用される労働関係法令や締結した労働者派遣契約の内容などについて周知すること
ⅱ) 派遣受入期間の変更通知に関すること
ⅲ) 派遣先における均衡待遇の確保に関すること
ⅳ) 派遣先管理台帳の作成、記録及び保存等に関すること
ⅴ) 派遣スタッフからの苦情処理に当たること
ⅵ) 安全衛生に関すること
ⅶ) その他派遣元との連絡調整に関すること

2:2. 派遣スタッフの労保・社保適用の確認

受け入れ予定の派遣スタッフが、適切な社会保険(健康保険、厚生年金、雇用保険)に加入しているかを派遣会社に確認しましょう。

もしも入っていない場合、その理由が適正でないと考えられる場合には、派遣会社に正しく社会保険に加入させた後に派遣するよう要請することができます。

3. 派遣先の義務|派遣スタッフ受け入れ中

続いて、派遣スタッフを受け入れている最中に対処すべき義務についてご説明します。

3:1. 派遣先管理台帳への記載

派遣社員がきちんと働けているかチェックする時に利用します。
派遣先には、派遣先管理台帳の作成・記載・保存・記載内容の報告が義務とされています。
以下、派遣先管理台帳の項目です。

【派遣先管理台帳の項目】
●派遣労働者の氏名
●派遣労働者が60歳以上の者であるか否か
●派遣元事業主・事業所の名称
●派遣元事業主の事業所の所在地
●業務の内容
●無期雇用か有期雇用か
●派遣先の事業所の名称、就業場所及び組織単位、所在地
●派遣元責任者・派遣先責任者
●就業状況(就業日・勤務時間・休憩時間・休日など)
●社会・労働保険の有無
●教育訓練の実施日時・内容
●紹介予定派遣の場合はその旨について
Check!
派遣先管理台帳は、派遣終了日~3年間保存することが義務とされています。もし作成・通知・保存していない場合、30万円以下の罰金が科せられてしまいます。

3:2. 福利厚生施設の利用機会の付与

福利厚生施設

派遣先企業は、社員に利用機会を与えている福利厚生施設のうち給食施設・更衣室・休憩室は、派遣スタッフに対しても同様に利用機会を与えなければなりません。
もし従わなかった場合、指導や助言または勧告・公表されてしまう可能性があります。

また、上記施設以外にも社員が通常利用している施設(例えば、物品販売所・診療所・保育所・図書館等)に関して便宜を図る必要があります。

3:3. 情報提供等の協力配慮

派遣会社から求められた際には、派遣スタッフの職務遂行状況に関する情報を提供することが配慮義務となりました。

職務遂行状況とは、仕事の処理スピードや目標達成具合等です。派遣先企業の能力評価の基準、または様式により客観的に示されたものであると良いでしょう。
派遣会社に情報を提供する目的には、以下のことが挙げられます。

情報提供の目的
  • 派遣スタッフのキャリアアップ教育・コンサルティングのため
  • 派遣スタッフと比較対象労働者との間の待遇の相違内容、理由等の説明のため
  • 派遣先社員との間の均等・均衡待遇の確保のため
  • 労使協定に基づく待遇確保のため

3:4. 教育訓練の実施

派遣スタッフが業務を行う上で、業務に密接に関わる教育訓練は、派遣先企業が実施することが適当であるとして義務化されました。

また、派遣会社が実施する段階的・体系的な教育訓練は、派遣先企業も可能な限り協力するほか、派遣スタッフが適切に教育訓練を受けられるように便宜を図る必要があります。

もしも違反した場合、派遣先企業は指導・助言を受けるほか、勧告・公表の対象となる可能性もあります。

4. 派遣先の義務|派遣スタッフ受け入れ後

派遣スタッフを受け入れた後も、派遣先企業がすべき義務があります。
しっかりと押さえておきましょう。

4:1. 雇用契約の申込み義務

契約

派遣先企業は一定の場合において、派遣スタッフに対する雇用契約の申込をすることが義務付けられました。

なお、義務が発生するのは以下の場合です。

雇用契約の申込義務が発生するケース
  • 派遣受入期間に制限がある業務で、抵触日以降もその派遣スタッフに継続してほしい場合
  • 派遣受け入れ期間に制限がない業務で、同一の業務に同一の派遣スタッフを3年以上受け入れていて、その同一業務に新たに派遣スタッフを雇い入れる場合

目的は、派遣スタッフの直接雇用を促進をするためです。
この場合、派遣会社は派遣スタッフが派遣先企業へ直接雇用されることを妨ぐことはできません。

5. まとめ

この記事では、派遣スタッフ受け入れの際に派遣先企業がするべき義務について、契約締結時・受け入れ前・受け入れ中・受け入れ後とそれぞれのフェーズを分けて解説させて頂きました。

しっかりポイントを押さえて適切な運用に努めましょう。


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